いくら

午前中のこと。秀くんを救急車に乗せて病院に運びました。

いくらを食べて数分後に、目が痒いと言い出して、みるみる調子が悪くなっていったのです。前回、熱性痙攣でお世話になった広尾病院に電話して相談したところ、「大至急救急車に乗せてきてください」と告げられました。タクシーで、と言っても、「いや、救急車で来てください」と先生がおっしゃるので、これは大変なことだ、と思って、急いで救急車を呼びました。

秀くんは、顔が腫れていて、そう、特に目の周りが腫れていて、ぐったりしていましたが、意識はあって、しゃべりかけると返事をしてくれました。

病院につくと、すぐに処置室に通されました。先生達は既に準備が完了していて、「これからすぐに処置します。注射します。」とおっしゃいました。僕は部屋の外に出されました。「ショック症状です。」という言葉だけが頭の中をぐるぐる回りました。

少したって、処置室から、秀くんの泣き声が聞こえてきました。

そして、僕が呼ばれました。先生は、「アナフィラキシ−ショック」とおっしゃいました。
処置を正しく行わないと危険だとおっしゃいました。入院したほうがいいだろうとも。
秀くんは、処置台の上で、点滴を受けながら、ちょこんと座っていました。
目が腫れていて、元気はなくて、顔全体もはれぼったくて、なんだか、なんだか、とてもかわいそうでした。

とりあえず、点滴が終わるまでは、一緒にいてもいいことになって、小さい子供用のベッドで、1時間半ほど、過ごしました。

最初は、秀くん、ちょこんと座ってました。話し掛けると、「うん、うん。」だけ言っていました。でも、思い出したように、「ママちゃん!ママちゃん!」「あっちいく。かえる。」と言い出しました。「ママちゃんはこれないよー。」「がんばったら帰れるよー。」と答えていました。でも、泣いたりはしなくて、強い子でした。

点滴の鉄の棒の上のところに、くじらのぬいぐるみが二つひっかけてありました。
秀くんがそれをみつけて、「くじらー」と言いました。青い方のくじらをとって、秀くんに近づけると、点滴の刺さった右手で払いのけながら、「ぱーんち」と言いました。点滴が外れないようにと、とりつけてある添え木がカッコイイと思っているようです。「ぱーんち」です。
黄緑色のくじらも「ぱーんち」されました。

顔はまだ腫れぼったいけれども、だいぶ顔色は良くなっていました。なんだか嬉しくて、秀くんvsくじらたちの試合を少し楽しみました。だんだん、元気になってきました。点滴が外れるかと思うぐらい勢いが出てきました。いやぁ、良かった。安心しました。

「秀ちゃん、くじらぱんちしたらかわいそうでしょ?だっこする?」と訊くと、「しゅるしゅる。」と言いました。くじらたちを胸に抱いて少し大人しくなりました。

「かえる。かえる。ママちゃん、あーちゃん、めめちゃん。」と寂しそうにいいました。

先生がいらっしゃって、「はしかの予防接種は受けてます?本当は入院して欲しいのですけど、今、小児病棟はあまりいい状態ではないのですよ。。。」とおっしゃいました。
えみちゃんに電話して、はしかの予防接種は一年前に受けていることを確認して、先生にお話しました。その結果、もう少し状態を見て、大丈夫そうであれば、家に帰って様子を見る、ということにしました。秀くんもその頃は、顔色もだいぶ良かったので、先生も安心した様子でした。

アナフィラキシーショック」という言葉を今まで聞いたことがなかったので、先生と看護婦さんに確認してみました。アレルギーを引き起こすような食物をとったときに、それを異物とみなして、過剰に反応してしまう体の動き、と教わりました。酷いケースだと、秀くんがそういう状態になったように、血圧低下の結果、意識が遠のいたり、または、呼吸障害に見舞われるようなことが起こったりするとのこと。最悪、命にかかわるとのことでした。先生は、いくらを口にしてから発症するまでの時間が短かったこと、かゆみだけではなくぐったりした症状がすぐにおこったこと、の2点から、慎重かつ迅速に対応を行わなければならないと思ったそうです。

アレルギー。そばやピーナッツの話を聞いたことはあったのですが、まさか、いくら、とは。
しかも、こんなに重大なことになるなんて。。。
救急車に乗せて病院に運んでいなかったら、命にかかわることになっていたかもしれない、そう思ったときには、ぞっとしました。

2時間ぐらいしたところで、もう一度先生にきていただいて、状態を確認してもらいました。家に帰れることになりました。数時間後に症状がまた出てくる可能性もあること、特に、呼吸障害が現れたときは注意すること、等を伺いました。

タクシーに乗って、家に帰りました。えみちゃんは、とてもとても心配していました。それはそうだよね。入院するっていうぐらい大変なことなんだから。でも、秀くんの元気いっぱいの様子をみて、少し安心していました。その頃には、ホントに、元気いっぱいでした。

お昼寝をして、起きた頃には、普通の状態に戻っていました。ご飯も普通に、というか、いつも通り豪快に食べていました。

気晴らしにお散歩にでかけても大丈夫なぐらい回復しました。
午前中あまりにかわいそうだったので、近くのコンビニの前のガチャガチャで、たくさん「ゲキレンジャー」のフィギアを買ってあげました。

ゲキレンジャーごっこで疲れた秀くん。今は、すやすや寝ています。

油断はできないけど、回復してくれてよかった。。。ホントそう思います。

5月11日に、アレルギー検査の結果がでるということなので、それをいただいてこようと思います。大変ですね。アレルギー。これから一生付き合っていくことになるのかな。かわいそうに。。。